お味噌汁の奇跡|“食べない期”に向き合った日々(後編)

慣らし保育を終え、いよいよ給食が始まりました。
とはいえ、最初からうまくいくわけもなく。
連絡帳に書かれた「食べた量」を見るたび、何度もため息がこぼれました。
特にお肉は苦手なようで、口に入れてもすぐに出してしまい、ほとんど残していたようです。
そういえば、家ではほとんどお肉を出していなかったことに気づき、「もっとちゃんと慣らしてあげればよかったなあ…」と、少し後悔しました。
毎日ドキドキしながら連絡帳を読み、お迎えのたびに先生の一言に一喜一憂していたある日。
先生から思いがけない報告を受けました。
「今日は、お味噌汁をおかわりしましたよ!」
えっ、お味噌汁!?
飲んだんですか!?
……っていうか、家であげたこと、ありません!
私が驚くと、先生もびっくり。
「え〜っ! おかずは食べなかったんですけど、お味噌汁はごくごく飲んでましたよ。
しかも、器を自分で持って、すごく上手でした!」
そう言いながら、給食中の写真も見せてくれました。
そこには、両手でしっかり器を持ち、ゴクゴクとお味噌汁を飲み干している息子の姿が。
器を傾けて、最後の一滴まで飲もうとしている様子に、私は本当に驚きました。
そして、またひとつ反省しました。
「汚れるから」という理由で、汁物なんて出す発想がなかったこと。
「自分では飲めない」と勝手に決めつけて、選択肢から外していたこと。
お味噌汁、好きだったんだね。
ごめんね、出してあげてなくて。その日は早速、家でもお味噌汁を出してみました。
一口目はスプーンで味見程度にあげてみると、どんな味か確かめるように口をんまんまと動かします。
好きな味だったようで、両手を伸ばして器を持とうとしてきました。
やっぱり好きなんだ、とわかって、恐る恐る器を委ねてみました。
もちろん、ひっくり返してもいいように床にはビニールシートを敷いて準備万端。
慣れない手つきで器を持ち、口へ運んでズズズ……。
一気に飲み干して、「もっと!」と言わんばかりに器を差し出してきます。
バナナ以外で初めてのおかわり。
この日は2杯おかわりしました。
一緒に出した白ごはんとブロッコリーは全然食べなかったけど、今日はこれでいいや。と、ごちそうさまをしました。
それから徐々に、「〜をよく食べましたよ!」という食べ物が増えていきました。
蒸しパン、ツナポテト、マカロニ、カレー……。
全部、家では出したことがありません(笑)
ですが私は、もう反省しなくなりました。
息子の食事に向き合う中で、いろんな人の言葉に出会いながら、
「〜できなかった私はダメだった」と、後悔する必要はないと思うようになったのです。
食事時間が嫌で仕方なかったあの頃の私。
決してサボっていたわけじゃない。
むしろ、向き合いすぎて苦しかったのだと思います。
だからといって、私の性格的に頑張らないこともできなかった。
あのときの私の一つひとつの選択は、その時のベストだったからこそ、
いま息子は、自分で「おいしい」を選べているのだと思うのです。
できない自分に目がいきがちだけれど、
本当に伝えたかったことは、ちゃんと残っていたんだと、息子の姿から教えてもらいます。
食べるときは「いただきます」、
食べないなら「ごちそうさま」。
私が言わなくても、息子は自分で手をパッチンと合わせるようになりました。
相変わらずの食べムラにイライラして、途中で椅子から下ろそうとしたときでも、
一口も食べなくても、パッチンって(笑)
ハッと我にかえって、「そうね、食べないならごちそうさまね」と言える私がいました。
何も聞き入れてもらえていないようで、
実はちゃんと、大切なことは伝わっていたのだと気づかされた最近です。
きっとまた、食べない時期がきます。
今まで以上に壮絶な、イヤイヤ期だってきます。
私も、我を忘れるほど怒り狂う日があると思う。
だけど、そんなときも
「自分が息子に何を伝えたいのか?」
その芯が怒りや疲れにかき消されないように、選択していきたいと思っています。
※この記事は前編の続きです。まだ読んでいない方はこちらからどうぞ
▶︎ お味噌汁の奇跡|“食べない期”に向き合った日々(前編)